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2019年08月03日(土)

世の中をうつくしくする仕事

木工 山本美文さんのお話会「世の中をうつくしくする仕事」は、クラフトのある暮らし、その先にあるものをじっくり伺う連続トークイベントです。毎回ゲストをお迎えして、山本さんとの対談形式で進めるお話会。第2回目のゲストは、組み木デザイナー・小黒三郎さんです。

ぬくもりある愛らしい組み木のおもちゃで全国に知られる小黒三郎さん。倉敷での40年の制作活動に、この夏で幕を下ろされます。岡山を離れる前にお話を伺える貴重な機会となります。長年にわたって互いの仕事から刺激し合い、多くのことを小黒さんから学んできたという山本さん。おふたりの対話から、なにか大切なことを感じ取っていただけますように。

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【出会い】
東に中央アルプス、北西に御岳山を望む木曾谷の山村にある木工の専門学校に通っていた二十年前、糸のこの練習をしていた友人が、毎日のように動物の組み木を切り、自慢しながら僕に見せてくれたことがあります。後にそれが、組み木デザイナー・小黒三郎さんの作品の写し(コピー)であることを知るのですが、当時の若き木工の卵たちの中にも小黒さんに羨望の眼差しを注いでいた仲間がたくさんいました。

僕が小黒さんに出会ったのは、倉敷での初個展の折。専門学校時代に憧れた人を前に、ガチガチに緊張してしまっていた記憶だけが残っています。スイス・ネフ社とデザイン契約され、ニューヨーク近代美術館はじめ国内外の美術館に永久コレクションとして作品が収められ、木工を通して世界中の子ども達に笑顔を贈る小黒さんの姿は、今も雲の上の存在には変わりませんが、初めてお会いして以来、ものづくりとしてのデザイン観や姿勢など 折にふれ教えてもらってきました。僕の20代は、スキーに情熱の全てをかけ、木工とは無縁の世界からの転職だったため、小黒さんから聞くデザイン観の全てが目から鱗状態。初個展以来やりとりしてきた手紙や通信は大切にファイルし、時折読み返してはモノづくりのヒントを得る僕のバイブルにしています。

山本美文

 

【山本作品のさりげないおしゃれ】
このギャラリーで開かれる山本美文さんの個展を何度も見てきて、いつか二人で展示してみたいと思うようになりました。今回のクロスオーバー展* を呼びかけたのはぼくの方で、山本さんは快く引き受けてくれました。山本さんの家具の秀作のひとつに、踊り子がひと休みするための三本足の椅子があります。座ると180度の方角に尻を回転でき、背もたれが肘当てになります。水平線と垂直線と円形からなる構成のバランスが美しく、10数年と見て使いましたが、見飽きません。円形の座板の上にはいつもぼくの新作組み木が飾られるようになりました。多分作者は組み木がここに置かれるとは考えていなかったかもしれませんが、ここに飾られるとぼくの動物たちが映えるのです。

作者の人柄、人格などが作品に表れるというのは山本さんの作品を使ってきて、なるほどと思います。単純、素朴、やさしさ、さりげないおしゃれ、そばに居るだけで心やすまる作品であり、人柄なのだと、もう20年近くおつきあいしてきて思います。

小黒三郎

*注「クロスオーバー展」 2006年ギャラリー幹(岡山県倉敷市)にて開催された小黒三郎・山本美文二人展。前述の文章は、同展に寄せられたお二人のことばです。

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